融資の目途がみえたら晴れて不動産売買契約に進みます。
もちろん、融資目途が見えてなくても契約締結するパターンもありますが、契約締結後にブレイクするのは仲介業者にとっても手間なので、特にブレイクしやすい築古の場合はだいたいは目途が見えた後に締結することが多いです。
ここでは、これから始めて契約締結する方にむけて解説します。
- これから不動産投資をしようと考えている方
- これまで不動産売買契約を締結したことがない方
- 不動産売買契約時に何を気を付けたらいいかわからない方
不動産売買契約の締結にあたり
不動産売買契約を締結する際に必要な書類は2つあります。
不動産売買契約書と重要事項説明書になります。
前者は”ばいけい”、後者は”じゅうせつ”と呼ばれるものです。
不動産売買契約書とは、売買の対象となる不動産を記載されている金額や条件で買主が買い付けることを規定している契約書です。
重要事項説明書とは、不動産仲介業者が契約締結にあたり買主に対して書面を交付して説明しなければならない書類であり、宅地建物取引士が説明しなければならないと、宅建業法35条に定められています。
- 不動産売買契約書
- 重要事項説明書
不動産業者はプロではない
重要事項説明書は宅建士による説明が義務付けられているため安心だろうという話を聞くことがあります。
しかし、不動産業者はプロではありません。
もう少し正確にいうと、契約書類にひな形を作成している法務部や弁護士はプロですが、不動産業者の担当者はプロではありません。
たとえ宅建士であっても盲目的に信用することは厳禁です。
私も数はそこまで多くないですがこれまで何回か取引してきた中で、資料がノーミスだった担当者はゼロです。
ひどい担当者だとこちらが指摘した契約書の不備に関する内容を理解できず、宅建資格を有する上司に相談したけど問題なかったとすら言われたことがありました。その後、法務部に確認してもらったら私の指摘が正しかったことが判明しました。
私は、不動産業者の担当者は法律の素人だと思って接していますが、たとえ相手が素人だったとしても買主には入念に書類を確認する責任があるということです。
不動産業者は善良な人ではない
よく被害者としてニュースに登場する不動産投資家の主張では、不動産業者を信頼していたのに騙された、ということを言っている人がでてきます。
通常の感覚を持っている方であれば違和感を感じると思いますが、不動産業者はボランティアで仕事をしているわけではなく利益目的のために仕事をしているわけです。
つまり、あなたのために物件を紹介しているわけではなく利益のために物件を紹介しているのです。
さらに、これまでに歴史を紐解くと不動産業界は違法・不正が多く被害者が多かったため、宅建業法が整備され少しでも被害者を減らそうとしてきているわけです。
なので、いわゆる大企業で働いているような人が出会わないような詐欺師に近い人が毎日獲物を探しているのです。
財閥系の大手仲介業者の担当者では少ないですが、聞いたことがないような業者になればなるほどこの傾向は強くなる印象があります。
詐欺師だと疑いこそすれ、最初から信用して取引をしようとするのは、まさに業者からしてみると優良顧客でしょう。
契約前に事前にデータをもらう
宅建業法からすると不動産売買契約のまえに重要事項説明をすればよいので、通常は重要事項説明⇒売買契約書の流れで同じタイミングで締結します。
なので、業者からしてみると契約締結の場にいきなり資料を持参して説明して締結すれば問題ありません。
ただ、通常のビジネスの場でもその場で契約書を見せられて締結するなんてことはしないですよね。
ましてや不動産売買契約ともなれば金額も大きいですし失敗したらこれまで築いてきた人生が終わります。
なので、必ず契約前にデータで不動産売買契約書と重要事項説明書をもらって時間をかけて中身を確認してください。
売契や重説に不慣れな方であれば1週間前程度、慣れている方であれば2-3日前にもらいましょう。
一つ一つ読みながらわからないことはインターネットで調べる、認識と異なる箇所は業者に連絡して修正してもらう、記載が足りない箇所は追記してもらう、などの作業が必要となってきます。
売買契約書よりも重要事項説明書
もちろん契約を交わすため売買契約書が大切なのは言うまでもありませんが、不動産売買のタイミングでは重要事項説明書の内容をしっかり確認してください。
なぜなら、制度趣旨として、不動産売買は権利関係や取引条件が複雑で制度や知識が十分でない買主を守るために必要な事項を宅建士をして説明させることで守ろうとしているためです。
なので、重要事項説明書は不動産売買の意思決定を行うためにとても重要な内容が記載されています。
どの情報を確認したら良いか
とはいえ、重要事項説明書はボリュームも多く、初めて読む方にとっては内容を理解するだけでも大変です。
そこで、重説の中でも特に気を付けて確認していただきたい点を記載します。
- 不動産価格、手付金額、支払予定日
- 売買の対象となる物件の表示
- 土地面積(確定か、実積か、現況か)
- 建物(事前に聞いていた内容とあっているか)
- 接道(事前に聞いていた内容とあっているか、前面道路の幅員等)
- 接道する道路の種類(再建築可能か)
- 水道、電気、ガス等のインフラ(事前に聞いていた内容とあっているか)
- 手付解除の期間は十分か
- ローン特約による解除は有か、期間は十分か
- 契約不適合免責に関する情報はどうなっているか(築古だと免責にすることが多い)
- その他重要な事項に書かれている内容を合意できるか
その他重要な事項≒特約に重要な情報が書かれている
近年は、売契も重説も全日本不動産協会等の業界団体が用意したひな形を使っている不動産業者が多くなっています。
なので、そもそもひな形を使っていなければ怪しいのですが、ひな形を使っている場合は本文には解釈に怪しいところはなく、記載されている情報があっているか間違っているかなど確認すれば足ります。
一方で、ひな形に網羅されていない情報をその他重要な事項≒特約として記載することが多く、数ページにわたって情報が記載されていることがあります。
文字も小さく読みにくい箇所なのですが、実は重要な情報が記載されている確率が一番高くしっかり読み込んでください。
なぜなら、不動産業者は事前にわかっていることなどはすべて説明しなければならず、重説の中でふれていれば説明したことになるため、たとえ細かかったとしてもネガティブとなりうる情報を盛り込んできます。
たとえば、契約不適合免責、プロパンガスやインターネット設備契約等の引継ぎ、過去の死体発見などの精神的瑕疵、アスベスト等の建物情報、などとにかくこれまで説明を受けてこなかった情報も盛り込まれている可能性があります。
内容がわからないことがあれば必ず事前に業者に確認し、契約を締結するのかしないのかご自身でご判断ください。
売買契約当日に必要な持ち物
売買契約当日に必要な持ち物はそこまで多くはありません。
- 手付金
- 実印・認印
- 身分証明書
- 売買契約書に貼る印紙(不動産業者が用意し清算するパターンもあります)
- 通帳・キャッシュカード(手付金を振り込む場合)
契約締結したら消費者ではなく投資家
最後に、売買契約書に署名押印をしたら、あなたは契約当事者であり不動産投資家です。
間違っても消費者ではないので、消費者保護法で守られることはありません。
どんなに不動産業者を信じようが、意思決定をしたのはあなた自身であり、すべての責任はあなたにあります。
契約書には相応の責任が付き添いますので、それぐらいの決意をもって契約締結してください。
まとめ
ここでは不動産売買契約時に気を付けることを中心に整理しました。
契約書を締結した以上「知らなかった」では済まされません。
特に初めて購入しようとする方は、自分がすべて理解して納得できるように事前にしっかり読み込んで疑問を解決してから契約当日を迎えてください。
契約を締結したあなたは消費者ではなく投資家です、入念に確認して納得してサインしましょう!